【独学合格者ノート】行政書士試験受験者のための行政法【これを見れば行政法がわかる!】その2 行政手続法
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行政法の続き、今回は行政手続法です。
行政手続法
行政手続法は、その規制対象が処分・行政指導・届出・命令等制定手続き。
行政手続法の適用除外
- 地方公共団体の機関がする処分・機関に対する処分→法律・命令に基づく場合は適用。条例・規則に基づく場合は適用されない。
- 地方公共団体の機関が行う行政指導、命令等の制定→適用されない
国の機関や地方公共団体の機関相互の処分や届出は私人と同様の立場に立って名宛人となる場合のみ適用
3条適用除外事由
- 行政機関と異なる機関で慎重な手続きで行われるもの…国会・裁判所・検査官会議
- 刑事手続きに類する慎重な手続きで行われるもの…検察官・検察事務次官等
- 公法上の特別な関係に基づく処分であるもの…学校・刑務所・拘留所・公務員・元公務員
- 国家主権にかかわるもの…外国人の出入国・難民認定・帰化
- 処分の性質上(専門技術性)の適用除外とされるもの…学識試験・検定・利害の調整を目的とした裁定等
申請
行政庁は、申請により求められた許認可をするかどうかを判断するための具体的な審査基準を定め、公表しなければならない。
申請が行政庁に到達してから、許認可等について応答するまでに通常要すべき標準処理期間を定めるよう努めなければならない。ただし、事前指導や補正指導の機関は含まれない。
標準処理期間は設定した場合は公表しなければならない。
申請が行政庁の事務所に到達したら、遅滞なく審査を開始しなければならない。形式的要件に適合しない場合は速やかに相当期間を定めて補正を求めるか、拒否しなければならない。
行政庁は、申請に対して諾否の応答義務がある。
申請により求められた許認可等を拒否する場合には同時にその理由を示さなければならない。
拒否処分を書面でするときは、理由も書面でしなければならず、その程度は申請者が明確に了知しうるものであることが必要。ただし、数量的指標など、客観的に明確であり、かつ申請書の記載・添付書類から明らかなときは申請者の求めがあったときに示せば足りる。
申請者の求めに応じて、申請に係る審査の進行状況及び申請に対する処分時期の見通し等の情報提供をするよう努めなければならない。
申請者以外の者の利害関係を考慮すべきことが許認可等の要件とされている場合は、必要に応じて公聴会の開催など、申請以外の者の意見聴取の機会を設けるよう努めなければならない。
一つの許認可について複数の行政庁がかかわる場合、行政庁が互いに様子見をして審査が停滞するケースがあるので、次のように規定されている。
- 他の行政庁で同一の申請者からされた関連する申請が審査中であることを理由に自己の審査又は判断を殊更に遅延させてはならない。
- 複数の行政庁が関連する申請の場合、必要に応じ行政庁同士が互いに連絡を取り、申請者からの説明の聴取を共同して行う等により審査の促進に努めなければならない。
届出
形式上適法な届出がその提出先行政機関の事務所に到達したときに、手続上の義務が履行されたものとみなされる。
意見公募手続等
命令等を定める機関が命令等を定めるにあたり、事前に命令等の案を示し、その案について広く国民から意見や情報を募集するもの。
上記の国民とは法人や外国人でもよい。
30日以上公示。→やむをえない理由(明示必要)がある場合は30日を下回ってもよい。
提出された意見については十分に考慮しなければならない。
結果は公示しなければならない。→命令等を制定しなくても。
不利益処分
不利益処分とは、行政庁が法令に基づき、特定の者を名宛人とし、直接これに義務を課し、またはその権利を制限する処分。
行政庁は、処分基準を定めるよう努めなければならない。→対象行為が多岐に渡り、困難なため。
行政庁は、処分基準を公表するよう努めなければならない。→公表すると、不正を助長しかねないため。
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、聴聞または弁明の機会の付与の手続をとらなければならない。
聴聞
・不利益の程度が比較的大きい不利益処分。例)許認可の取消、資格・地位の直接剥奪等
・原則、口頭手続。原則、非公開。
・聴聞の主体(審理を主宰する者)は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者がなる。→処分者とは別。
・代理人は聴聞に関する一切の行為をすることができる。資格は書面で証明。
・参加人の参加、補佐人の同行、行政庁の職員に質問は主催者の許可が必要。
・当事者・参加人は出頭に代え、陳述書等を提出できる。
・当事者・参加人は聴聞の通知があった時から聴聞が終結するまでの間、行政庁に対し、調書その他の証拠資料等の閲覧を求めることができる。
・当事者が正当な理由なく聴聞期日に出頭しなかったり、陳述書を提出しなかった場合は聴聞を終結できる。
主宰者は聴聞の期日ごとに聴聞調書を作成しなければならない。
主宰者は聴聞の終結後、報告書を作成し、調書とともに行政庁に提出しなければならない。
行政庁が必要と認めた時には、主宰者に聴聞の再開を命ずることができる。
弁明の機会の付与
・不利益の程度が比較的小さい不利益処分。例)営業停止処分
・原則、書面手続。
・主体は不利益処分をする行政庁と同じ機関。
・代理人→聴聞と同様。
・参加人・補佐人は参加できない。→書面を出すのが本人のみなので。
・調書その他の証拠資料等の閲覧不可。
申請を拒否する処分は、不利益処分から除外されるため、聴聞・弁明の機会の付与は必要ない。
行政庁は不利益処分をするとき、その名宛人に対して、同時にその理由を示さなければならない。
→書面で不利益処分を行うときは、理由も書面でなければならない。
ただし、差し迫った必要がある場合には理由を示さなくても良い。
→困難な事情がある場合を除いて、処分後相当の期間内に理由を示す必要がある。
行政指導
行政機関がその任務または所掌の事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため、特定の者に一定の作為または不作為を求める指導、助言、勧告、その他の行為であって処分に該当しないもの
行政指導は行政機関が非権力的な手段によって国民に働きかけ、任意の協力を求める事実上の行為に過ぎない。そして、国民が行政指導に従わないことを理由に不利益な扱いをしてはならない。
行政指導には法律の根拠は必要ない。
申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず、当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。
行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨・内容・責任者①を明確に示さなければならない。また、行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、その根拠となる法令の条項・要件とその要件に適合する理由を示さなければならない。
行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から上記①を記載した書面の交付を求められたときは行政上特別の支障がない限り、原則として、これを書面交付しなければならない。
複数の者を対象とする行政指導にあたっては、これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項を定め、かつ行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。→行政指導指針
中止等の求め
法令に違反する行為の是正を求める行政指導の相手方は、その行政指導が法律の要件に適合しないと思料するときは、その行政指導をした行政機関に対して、指導の中止その他必要な措置を取るよう求めることができる。
処分等の求め
何人も、法律に違反する事実がある場合において、行政による適切な処分や行政指導がなされていないと思料するときは、書面で具体的な事実を適示して一定の処分又は行政指導を行うよう求めることができる。
違法な行政指導に対する救済として、従来は取消訴訟による救済は認められていなかったが、平成17年に行政指導に権力性が認められる場合には、取消訴訟の対象である「行政の処分その他公権力の行使」になりうるという判決が出た。
なお、行政指導の違法性を理由とした国家賠償訴訟は認められる。
行政手続法終わり。
次回、行政不服審査法。
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